特別企画:間違いだらけのフユシャク探し

「陸アザラシ」と呼ばれる、フユシャク亜科のメス(2014.3 豊川市)
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ナミスジフユナミシャクのメス(2014.2 豊川市)
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長年、暖かい季節には蝶を追いかけていた私ですが、冬場は暇を持て余していました。そういう時はコタツでネットサーフィンに限りますな。・・・すると、夏場は蝶のブログをやっている人が、冬は変な蛾(フユシャク)の写真を載せているではありませんか。調べてみると、フユシャクは冬に成虫が見られ、オスは飛ぶことが出来るのですが、メスは翅が退化して飛べないとのこと。・・・何とも不思議な存在ですね。
これはぜひその姿を見てみたいものだと思い、一念発起して北風が吹く冬山をさまよったのですが・・・
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 「全然見つからんよ〜!(´д`)。」
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う〜ん、どうしてでしょう?。探し方が悪いのか?、それとも場所が悪いのか?。と、試行錯誤しているうちに、偶然にもポツポツと見つかるようになって来ました。
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そこで思ったのですが、同じようにフユシャク探しに挑戦したものの挫折したという人は多いのではないかということです。全国で推定50人ぐらいは居るでしょう(笑)。そこで、ベテランの人が聞いたら笑われそうですが、「どうやら、こういう事らしい。」というポイントをまとめてみました。
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@食樹と発生時期
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まず、蝶での経験から察するに、フユシャクに限らず虫を探す上では、食樹と発生時期が何より重要だろうという事になりました。
ざっと図鑑を眺めたところ、幼虫は桜を食べるという種類が多いようです。その他、クヌギなどのブナ科の木を食べるものや、様々な木を食べる広食性のものもいるようです。(ちなみに成虫は何も食べません。)
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     イチモジフユナミシャクのメス:(2012.1 豊橋公園)カエデの木で発見。背景は吉田城。
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発生時期は地方や標高によって大きくずれるらしく、探すタイミングが微妙です。こればかりはフィールドに出て探るしかありませんが、数種類については、ようやく概要が見えてきました。
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これまでの悪戦苦闘の結果が、図1です。
地域は、愛知県豊橋市と豊川市の平野部、標高8〜60mの地点です。11月下旬に出て来るクロスジフユエダシャクの記録が少ないですが、最近その時期はムラサキツバメを探しているので・・・。
また、シーズン後半に出て来るフユシャク亜科のメスについては、同定に自信がありません。
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     図1:フユシャクの出現時期
     (愛知県豊橋市・豊川市。2010年1月3日〜2015年3月14日のデータ。○はオス、●はメス。)
 
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A探す場所について
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フユシャクはメスが飛べません。・・・これは探す場所を選ぶ上で重要なポイントだと思います。
どういう事かと言うと、例えば街の中にある公園では、何らかの理由で一度全滅してしまうと、そのあと他の場所から移って来れないわけです(※)。つまり、探すだけ無駄です!!。探す場所は、ある程度の面積があるか、裏山などと繋がっている所が望ましいわけです。
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※追記:幼虫は風に乗って移動する「バルーニング」を行うようですが、周囲から孤立した都会の公園などでは、絶滅状態からの復活は難しいでしょう。)
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また、食樹となっている木の根元にも注目です。幼虫は木から降りて落ち葉の中で蛹になるので、清掃作業などで落ち葉が取り除かれ、地面が端から端までカチコチになっている公園は望み薄ということになります。
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 シロフフユエダシャクのオス(2012.2 豊橋市 大高緑地):落ち葉の積もった広いフィールドで発見。
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Bさらにポイントを絞ると・・・
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最初のうちはいつも通っているフィールド内を手当たり次第に探し回ったのですが、これは非常に効率が悪いということに気がつきました。
フユシャクは灯火に集まる習性は弱いと言われているようですが、オスは外灯や自動販売機の近くで見つかることが多いようです。なので、その場所にフユシャクが生息しているかどうか手っ取り早く確かめるためには、まず外灯の近くでオスを探すのが良いようです。(できれば日没後に見に行くと、飛んでいる事がある)
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メスについては(昼間は)日当たりが良い木の幹の南側や、風が強い時には幹の風下側でよく見つかります。樹皮の割れ目の他、「それ以上は上がれない」、あるいは「それ以上は上がりにくい」場所がポイントのようです。
また、人工物の壁面にとまっていることがあります。羽化直後はどこにでもはい上がってしまうらしく、人工物に上がってしまった場合は交尾後に食樹に移動するようです。
 
 クロテンフユシャクのメス3頭(2013.2 豊川市):日当たりの良いコナラの幹の南側で発見。
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 シロオビフユシャクのオス(2013.1 豊川市):ソメイヨシノの幹で発見。
 シロオビフユシャクのメス(2010.1 豊橋市 大高緑地):人工物の上で発見。
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          クロヤマアリに襲われたフユシャク亜科のメス(2014.3 豊川市)
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・・・以上、参考になりましたでしょうか?
私自身、まだまだ見られた種類は少ないので、これから修行して多くの種類を見たいものだと思っています。
すっかり葉を落とした雑木林でフユシャクを探すときの気持ちは、宝物を探しているような感覚です。やめられないのは、そのせいかも知れません。
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