バタフライ・ウォッチングと双眼鏡 (pq) 


左から時計回りに、Nikon A.S(エーエス)、Nikon 遊(ゆう)、Nikon MIKRON(ミクロン)
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さて、バードウォッチングに適した双眼鏡については様々なサイトで紹介されていますが、バタフライウォッチングに適した双眼鏡については日本ではそれらしいサイトが少ないようです。これは「蝶を見る」と言う事がまだ趣味として市民権を得ていないからだと思いますが、蝶を「撮る」という事の補助としても双眼鏡の利用は有効なので、私が使用した双眼鏡の使用感を交えて論じてみたいと思います。
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●双眼鏡の選び方について
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@まずは仕様(スペック)面から考えてみましょう。
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蝶と鳥の違いを「見る」立場から考えてみると、決定的に違うのは対象までの距離で、蝶の方が圧倒的に近いです。よって、双眼鏡は最短合焦距離が近いものが必要になります。
私がかつて使っていた「ニコンA.S」は、最短合焦距離が2.5mで、これは遠過ぎました。次に使った「ニコン遊」は1.2mで、これはほとんど不満を感じる事はありません。立体視に拘らなければ、ニコンの単眼鏡では60cm、ツァイスの単眼鏡ではもっと短い物もあります。
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次に、蝶は不規則に飛ぶので、視野が狭いと見失う事があります。休眠している蝶を探す場合も視野が広い方が有利です。カタログに「実視界」と表記されているのがこれで、「見かけ視界」とは違うので注意が必要です。
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A次に見え味の面から考えてみると・・・。
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肝心の見え味については、実物が展示されているカメラ屋などで実際に覗いてみるべきです。同じスペックでも機種によってかなりの差があります。
対象を視野の中心に置くことが多い蝶の観察では、中心部のシャープさが第一の優先事項です。(これはどの分野でもそうかも知れませんが。)
以前、海外有名メーカーの双眼鏡を覗かせてもらった事があるのですが、地上の風景を見てその歪曲収差の強さに驚きました。しかし中心部のシャープさは驚異的で、これは鳥などをじーっと見るには良いのかも知れないと思いました。
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しかし試してみると分かる事ですが、動いている対象物を追ってみると、歪曲収差や像面湾曲が強い機種は気持ちが悪くなってきます。双眼鏡でスクロールしながら蝶を探すような場面でも同じです。
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・・・という感じで、見え味で最優先するのは中心部のシャープさ。次いで歪曲や像面湾曲の少なさ。もう一つ上げるとすれば、逆光に対する耐性でしょうか。逆光では蝶の種類が分かりにくいので、そういう場面こそ双眼鏡で確かめたいところです。
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参考までに私が使った双眼鏡を紹介します。今のところ、最も安価な「遊」が最優秀です(!)。世の中にはもっと蝶ウォッチングに適した機種があると思うので、使っている人はその結果をぜひ世間に紹介して頂きたいと思います。
機種  倍率×口径  最短合焦
距離 
実視界  使用期間  シャープさ  歪曲   逆光耐性
 A.S  8×25 2.5m  6度  1995年?
〜2010年
良好だが、視度調整が入っている右側が落ちる。 良好 非常に悪い
 遊  4×10 1.2m 10度 2010年〜 中心から半分くらいまで良好。 良好 良好※
 MIKRON  6×15 2.0m 8度 2015年〜 中心部は良好、端はかなり落ちる。 やや目立つ 良好※
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※:「遊」と「MIKRON」の逆光耐性については注釈が必要で、内面反射は悪い部分が見受けられるのですが、双眼鏡自体の全長が短いため、帽子をかぶっているとツバの部分がフードの役目をするので、結果的に逆光に強いです。
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●Nikon MIKRONについて
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Nikon MIKRON:勘違いする人がいそうですが、右上が接眼レンズ(目に当てる方)です。(゜ω゜)
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2015年9月、前から気になっていたNikon MIKRONを手に入れました。
余談ですが、ミクロンの綴りはMICRONだと思っていたらMIKRONでした。
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買ったその足で撮影に連れ出しましたが、第1印象は「変なものを買ってしまった・・・。」というものでした。
見え味は特に中心部がシャープで、対象を視野の中心に置くことが多い蝶の観察ではこれで十分です。
しかし、ピントリングが、10回くらい回さないと無限遠から最短距離まで移動しないので使いづらいです。おまけにホールドし難いので、ピントリングを回すたびに視野が揺れます。
さらに、持ち歩くと視度調節がずれてイライラします。
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左写真:赤○内の黒線が距離目盛。 右写真:これが問題の視度調節リング。
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と言う訳で、ピント合わせの問題について解決策を考えてみました。
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ピント合わせの時に前玉が前後する事を利用し、鏡筒にマジックで距離目盛を書き込みました。左写真は最短合焦距離に合わせた状態で、長い黒線が2m、その下の短い黒線が4mを表しています。覗く前に目盛を確認する癖をつければ、覗いてからのピント合わせの負担を軽減できます。
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視度調整がずれ易い点については、現在解決策を思案中・・・。接着剤で固めてしまう方法もありますが、そうすると何かあった時にメーカーの修理を受けられなくなります。視度調整リングの前にプラスチックか何かの「輪っか」を噛ませて、テープで止めるのがスマートかも?。良い方法を思いついたら更新したいと思います。
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